アニメ/漫画/小説感想

テキトーに書いてます

2021年に読んだ漫画小説

2021年に読んだ漫画小説の感想を書く(随時更新したい...)

【漫画】
ハンターハンター1巻~13巻 score:4.3/5.0
旧アニメシリーズは鑑賞済みだったが原作未読なため読み進めている。
13巻までなため、「ハンター試験」「ゾルディック家」「天空闘技場」「ヨークシンシティ」まで。
最も驚いたところは、ハンター試験編の完璧なところ。ダレることなくスピーディに展開していく。少年漫画の美味しいところをぎゅっと凝縮した面白さ、大傑作というところ。超おススメ。ゾルディック家は、印象的なシーン(大きな門、巨大な犬、コイン投げ遊び)が多く楽しめる。しかし、天空闘技場は正直面白く感じない。ここから「念」の概念が入るけれど、その設定の説明がくどい。また、念の応用例の説明も入り、終始グダっているように感じた。ほぼほぼ設定説明編といって良いと思う。ヨークシンシティに入ってから、また面白くなる(ハンター試験編ほどではなかったが)。クラピカの因縁ともあって終始重たい話になっているが、ゴン・キルアの話は明るめ、クラピカの話は暗めと2軸でバランス良く描いていて良い。ゾルディック家のメンバーも参加するなど展開の規模も大きくなって面白かった。しかし、ヨークシンシティ編の後編、具体的にはクモのメンバーが全滅した一報が伝わるまでは面白かったが、後半部は特に面白くなかった。前半部の迫力に比べて、後半部は基本小規模で地味になってしまっている。話としてずっとスリリングなままなので、緩急があまりなく楽しめなかった。
ハンター試験編=ゾルディック家 >>ヨークシンシティ >>>>>>天空闘技場 という感想。

チェンソーマン1巻~11巻 score:4.0/5.0
いわゆる公安編を読了。これに関しては、他ブログ記事で詳しく書いたのでそちらを参照。


【小説】
「映像の原則」著:富野 由悠季 score:2.9/5.0
初手から小説ではないのは申し訳ない。映像業界では有名な本?だとは思う。読んだことがなかったので読みました。
感想としては「映像の教科書」というより「富野の思想ブック」という印象。はっきり言って「説明が下手」。説明をわかりやすくするために必要と言われるトピックセンテンスが皆無で、非常に散漫。いらない文章だらけになってしまっている。また、主張として弱い部分がある。例えば、暗転は使うな!と本で主張しているのに対して、後に「君の名は。」を褒めてる富野。明らかに矛盾した主張なので説得力がない。図もあまり挿入してないので、わからせるより「分かれよ!」と押しつけがましい。

「チューブな形而上学」著:アメリ―・ノートン score :4.0/5.0
タイトルからして硬派な印象だが内容としては緩い日常もの。分かりやすく言えば、ボスベイビーみたいなもので、高等な独り言をする主人公がその年齢らしい行動をする。このギャップが面白い。ページ数として150ページほどなのでさっくり読むことができる。舞台が1970年の兵庫県夙川と実際の作者の体験談のエピソードになっているので、森見登美彦的なちびまる子ちゃんといったほうがいいのかもしれない。ただ、「生」に関して子供視点から言及しているところがあり、そこはただのエンタメではなくフランス文学らしいっちゃらしい。

「なりそこない王子」著:星新一 score:3.0/5.0
星新一ショートショート12編収録。星新一の中でもつまらない方。打率が低い。
「魅惑の城」「そして、誰も,,,」が当たり。
「魅惑の城」は、ある風俗店と思われる店が人気になり主人公の警官が客のふりをして潜入する話。オチが面白いというよりも道中が面白い。魅惑の城という謎に向かう様がワクワクさせられる。
「そして、誰も...」は、オチも道中も面白い。宇宙船から1人また1人と人が消えていく。原因不明の自体に乗組員は
どうするのか...という話。

「おせっかいな神々」著:星新一 score:3.7/5.0
星新一ショートショート40編収録。星新一の中で割と当たりな方。打率はそこそこ。
「サービス」「奇妙な旅行」「問題の男」「マスコット」「夜の声」「箱」「午後の出来事」が当たり。
中でも、「奇妙な旅行」「夜の声」「箱」が好き。
「奇妙な旅行」は、何回も見る夢の場所に旅行にする話。「君の名は。」でも同じ展開ありましたね
「夜の声」は、友人を殺した主人公が刑罰を受けたくない故に自分を意識不明の状態にする話。夜の声が看護師の声と某氏の声、両方にかけているのが面白い。
「箱」は、生涯をかけて箱を開けないように守った男性の話。とても感動的なオチで良いと思う。

「未来いそっぷ」著:星新一 score:3.2/5.0
星新一ショートショート33編収録。星新一の中でもつまらない方。当たりはずれが激しい。
「底なしの沼」「ある商品」「おカバさま」「新しい症状」「少年と両親」が当たり。
中でも「新しい症状」以外はグサッとくる、星新一が意地悪だなと感じた。
「底なし沼」は戦争をし続けてしまうことの揶揄、「ある商品」は意地が悪すぎる宇宙人、
「おカバさま」は人間の馬鹿さ加減、「少年と両親」は反抗期の少年と両親のやりとりかと思わせといて...という具合。

ワンダーエッグプライオリティ感想

一言感想

ワンダーエッグ・プライオリティ」を全話視聴しました(特別編を除く)。一言で言えば「非常にもったいない作品」という感想になります。写実性のある映像、魅力的なキャラクターデザイン、落ち着いた色味等々ビジュアル面がほぼ完璧であるのに対して、テーマに対してしっかり向き合わない、設定や話運びが雑といったように脚本がこの上なく悪い。今まで映像の魅力さえあれば作品を楽しめる側でしたが、ここまで脚本が悪いと作品全体の評価がガタ落ちしてしまうなと率直に思う。

放送前の期待

この作品を見る動機として、若手クリエイターの筆頭が集結する作品だと確信したからです。若林信さんが監督、川上雄介さんがアクション監督、小林恵祐さんがコアアニメーターと、これだけで凄いアニメになるに違いないという面子。若林監督の過去作となる「22/7 あの日の彼女たち」ではこだわりを感じる比較的写実性の高いアニメーションで、ワンダーエッグのPVではそれと同じ方向性の映像だったため、映像作品として期待しました。一方で「22/7」は短編だったため、初のTVシリーズではどのようなアプローチで制作されるのかが不安だったのも事実。結果的に、期待に応えてくれる作品であったと同時に不安が的中した作品でもありました。

良かったポイント

  • 映像美
  • キャラクターデザイン

<映像美>
アニメーションのクオリティが高い。1話の冒頭だけで、こりゃ凄いやと思うほどでした。TVアニメーションとしてこのクオリティでやっていくの!?と驚き。でも、2話以降はクオリティ下がるんだろう...ということもなく、総集編になる前までは毎回凄い作画が複数個所あった。特に好きな作画は、2話のカーテンに包まるところ。人間がだらっとしながら、カーテンは人間の重みでピンと張る。その一連のシーンのアニメーションがとても好きだった。シリーズを通して特に映像的に魅力だった回のは「2話」「3話」「6話」「11話」。2話・3話はアクションメイン、6話・11話は芝居メインで巧かった。また、背景美術は全編良かった。非常に写実的な背景で画面ボケとの相性が良かったように思う。色味としても素晴らしく、少し落ち着いた色味。落ち着いた色味と写実的な背景によって、あまりTVシリーズでは見ないような特殊さを感じました。また、ほぼほぼコンテと演出を1人が兼任していて1話ごとにコントロールしようという気合を感じて良かった。映像に関しては、ほぼ満点。ただし、映像に関しても少し欠点を感じたのも事実、それは後述する。

<キャラクターデザイン>
PVの段階で思っていましたが、非常に上品なキャラデザイン。羽音たらく氏のデザインを今の流行りと組み合わせた感じを受けました。髪の毛のハイライトがゼリーみたいに見えたりと、一般的に描かれるデザインとは少し違う、万人受けしつつ個性を感じるデザインでした。

良くないポイント

  • テーマに向き合わない脚本
  • 設定のテキトーさ
  • 話運びの悪さ
  • 1話の映像の見せ方
  • クオリティコントロール

<テーマに向き合わない脚本>
この作品の話としては「重い」です。何が重いのかというと、「LGBT」や「妊娠」や「自殺」といったように個人の悩みが発生する要素をふんだんに取り入れている。この要素に対して、主人公たちは助けようと必死になるというのが基本的な展開なのですが、どの要素に対しても真剣に向き合っていると思えない。それら要素に関する悩みを解決せずに消費して毎回終了する。作品全体を「重くする」だけのために、これらの取り扱いに慎重になるべき要素を用いている。非常に危ういと思う。筆者もセクマイとして生きていて具体的に悩まされる事象に何回も出会っていますが、この作品を見て完全に自分のような存在を対象にした作品ではないと思いました。ボス(悩みの直近の原因)を倒すことで本当にその悩みを解決できると思っているんでしょうか?甚だ疑問。1つ1つの要素だけで1つの作品が出来るほどのものを毎回雑に扱って消費することは、テーマに向き合っていないと思う。

<設定のテキトーさ>
この作品の設定とその扱いがテキトーに感じます。以下の通り。

  • ボスと戦って倒すことと問題解決が不一致
  • 夢に入り込める設定が1話だけしか使われていない
  • 途中から参加した補助キャラがほぼ使われないままラストに至る
  • 2話で登場した妹の話がまったく扱われない
  • 人工知能と人工生命の違いがない(11話登場設定、おそらく脚本家・監督共にこの違いを理解してないことが原因)
  • ワンダーエッグ作成」の技術があれば元々の問題を解決できるだろうという設定の粗さ

<話運びの悪さ>
この作品は話運びとしても悪い。話の流れがかなり唐突に感じる。例えば、記憶に新しい11話を例にすると、アカと裏アカの家で過去の話を聞くという前に、主人公はなぜ家の近くをうろついていたのか。いる意味など何もなく、話を無理に展開させるためにそこにいる。このような雑さが1話から続く。全体的に詰めすぎで急展開が多い。特に思うのは6話で「私、学校に行く」という主人公の変化を表す印象的なセリフで終えたのに、それ以降の話数で学校に関するイベントを扱う話数がないこと。そういうところに雑さを感じる。キャラクターの心情を優先すべき作品にも関わらず唐突な展開ばかりなため、話運びの悪さを感じる。

<1話の映像の見せ方>
1話のコンテ演出が若林監督自身が担当でした。しかし、コンテがかなり悪いなと思ってしまった。1話の冒頭、掴みとなる重要な場面で1秒程度の短いカットを連続して用いるジャンプカットを使用。ジャンプカットは個人としてギャグで使うべきと思っていて、それ以外だとただ見づらいと思ってしまう。また、ズーム(トラックアップ)の用い方が不自然。主人公がドアを開ける場面で不自然なトラックアップのカメラワーク。この意図は何だろうと考えましたが、ただおしゃれだからやったんだろうと思う。キャラクターの心情にフォーカスすべきが結果として作品から気持ちが遠ざかってしまった。また、ドアを開けると廊下に繋がっていたという意外性ある展開、そこで主人公は驚くのですが、驚くタイミングが非常に遅い。これは「22/7」でもあった欠点ですが何かに反応するタイミングが遅いと「わざとらしさ」を感じる。例えば、人間を脅かして1秒後に「わっ!」と驚くとその人は驚いたふりをしていると感じるはず。これ同様のことがドアの一連の場面で起きていた。このように、1話から映像の見せ方が変に凝りすぎている、音楽のないMVのように印象的な見せ方を短いスパンで繰り出しているのでストーリー性のある30分アニメでは忙しい・見づらいという印象を強く感じた。

<クオリティコントロール>
放送開始直後に、監督が階段で疲れ切っている写真がSNSにアップロードされるなど現場は大変だったんだろうと思う。実際に、放送を1回落として総集編になり、最終的には元々用意していた話数を全部放送できないまま終わってしまった。これは、監督自身が映像に対して熱意があり、それを実現しようと奮起した結果だと思う。かなり結果論ですが放送を落とさない程度のクオリティとして作るべきだったと思う。急遽入った総集編の以後の話数では映像的魅力が序盤中盤に比べて減り、取り柄の映像力が弱くなってしまっていた。特に、最終話は当日納品だけあって今までの映像力に比べると残念と思えるクオリティ。

総評

非常にもったいない。脚本が悪すぎる代表例。映像的魅力は強いので、映像の良い箇所だけをピックアップしてまとめたものを見るだけで十分だったと思う作品でした。特別編も一応放送予定になっていますが、今までの欠点をカバーできるほど良いものになるなんてことはまずないでしょう。

<ぼやき>
TVアニメという媒体がそこまで好きではない。クオリティが話数ごとに落ちていくし、放送を落とす場合もある。毎週楽しみにしていたが、急に作りが雑になり話としてまとまりがなくなるなんて普通にある。そう考えると、TVアニメに対する価値はリアルタイム性・ライブ性だけになる。そのため、繰り返し見られる作りにしようとする必要はない。しかしクオリティが高くないとそもそも視聴者に見られない結果になる。このままいけば、制作者たちはどんどん不幸になっていくんだろうなと思う。

チェンソーマン公安編(1巻~11巻)読んだ感想

チェンソーマンという漫画を11巻まで読みました。映像作家からの評判が良く、映画監督の岩井俊二さんまでも虜にするという作品だったので2020年の11月頃から1巻を読みだして先ほど最新刊の11巻まで読みました。

個人としての評価は「秀作」スコア:3.9点(5点満点中)
エンターテイメント性の高い作品。個性の強いキャラクター、展開の速さとノンストップな勢いのある漫画でした。映像作品からの影響が強く、見せ方に凝った漫画でもありました。お話が面白いというより、見せ方が非常にセンス溢れる作品。

チェンソーマンをおススメしたい人】
映像・映画が好きな人
テンポが速い漫画が読みたい人

チェンソーマンをおススメしづらい人】
工夫を凝らした戦略で敵を倒す漫画が好きな人
漫画でセリフのみを読んでページを進める人

チェンソーマンの特徴】

  • セリフを極力抑えた見せ方を多用

語られる漫画の名シーンには「名セリフ」がつきものというイメージでしたが、この作品は「ここぞ」というシーンでは、あえてセリフを用いない。セリフを抑えて「絵」で見せる。「絵」で見せることでその場の雰囲気が伝わってきて没入を高めていると思いました。逆に言えば、セリフがないコマが多いためセリフにしか興味ない人にとっては、よくわからない漫画という印象になるかもしれません。

  • 戦闘シーンを省略

戦闘シーンを多く描写して臨場感を高める、工夫した戦略で敵を倒すということが一切といって良いほど、この作品は無い。とりあえず勝つんだよというごり押し。そこまで漫画を読む人間ではないですが、この省略具合はあまり見ないタイプでした。

  • 展開の速さ

かなり展開の速い漫画です。心理描写をセリフではなく絵のみで示すため、心のざわつきであったりは見開き1ページぐらいで終了するなど必要な情報を最低限に絞ってどんどん進んでいきます。「展開」が魅力の漫画であるため、キャラクターの愛着という面では若干の弱さも感じます。

  • 漫画・映画へのリスペクト

作者が映画好きらしく、その趣味がかなり出ています。コマ割りが映画っぽく「同ポジ」を多用したりとセリフなしでキャラを交互に見せたりなど手数が多い見せ方。また、キャラクターの造形であったりも映画からのオマージュもあると思います。6巻ではサメ映画のパロディをいれたり、8巻では漫画「ベルセルク」や「ヘレディタリー継承」のオマージュをいれたりと作者が楽しんで作っていることが伝わりました。

  • 個性の強いキャラクター

この漫画でしか見たことないようなキャラクターは出てきません。テンプレートのようなキャラ造形が多い。しかし、飽きさせないように展開が進むにつれてあるテンプレートから別のテンプレートへと変化させたりしていたと思います。主人公の造形は2000年代にあった「化物語」の主人公みたく胸だのなんだの大好き人間のような感じだったはずが、どんどんと自分好みのクールな人間へと変化するのは嬉しかった。また、「パワー」ちゃんの岩井俊二映画に出てきそうなのが良いですね。「花とアリス」の主人公らの馬鹿っぷりと同じ匂いがします。パワーちゃんが好きな人は是非「花とアリス」「花とアリス殺人事件」を鑑賞することをお勧めします。

チェンソーマンの欠点】
上述したところが重なる点がありますが、ちょっとこれは微妙じゃないかなと思う部分もあるのは事実。

  • 展開の速さによって、散漫になってしまった展開も

何に注視すれば良いのか、具体的な目的は?といったように何がしたいのかわからなくなってしまったところがありました。7巻と8巻です。主人公たちが巻き込まれた上にさらに巻き込まれる展開には散漫さを感じました。

  • 唐突な展開

チェンソーマンになるシーンの唐突さ、銃の悪魔の設定が急に出てきたり、それを急に消化したりなど展開の速さによって犠牲になった部分が多い

  • テンプレートがすぎる箇所あり

主人公の造形が一昔前の女好きから始まりますが、その女好きの描写が何度も別作品で見たもので、最初からこの造形でいくのか...となってしまいました。

【巻ごとのスコア】
1巻:3.6
チェンソーマンになる描写がかなり不足 バディものとして面白くなりそうな予感をさせる
2巻:3.5
銃の悪魔の設定説明は面白いものの、やや唐突感がある 映画的な見せ方が1巻と比べて弱い
3巻:3.6
テンプレ展開なので順当という印象。キャラクターがどんなのかわかってくる。
4巻:3.7
違う現場で同時多発的に起こる見せ方があまりに最高だった
5巻:3.7
洋画でありそうな文字演出には笑ってしまった。敵キャラの造形が別作品で見たことがある...
6巻:4.3
ブラックラグーンのメイド回のようなジェットコースター展開 
7巻:3.4
キャラクターが多くなりすぎ、展開が速いままなので非常に散漫
8巻:3.3
7巻に続き散漫。傀儡という邪魔なキャラが全く魅力的でない。
ベルセルクの蝕のような描写展開、敵キャラの見た目がヘレディタリのオマージュかと
9巻:3.9
映画的な交互に見せる見せ方の多用が最高
10巻:4.0
一休みの上の絶望。白黒の漫画に暖色が見える。
11巻:4.2
BGMが聞こえてくるシーンの連続 エモーショナルさでは一番

「シュームの大冒険」という傑作を見た

2021年1月1日にNHK Eテレで放送された「シュームの大冒険~ママはどこ?~」を鑑賞しました。非常に素晴らしい作品。これは見るべき作品で、作品の良さを書いていこうと思います。

【情報】
邦題「シュームの大冒険~ママはどこ?~」
原題「L’Odyssée de Choum」
時間:約25分
フランス・ベルギー合作作品
会社:Picolo Pictures Bardaf! Productions
監督:ジュリアン・ビザロ
f:id:gramsta:20210221000258p:plain
画像出典:https://www.allocine.fr/film/fichefilm_gen_cfilm=268287.html

監督のHPにて、作品のショットやアートワークを見ることができます。
https://www.julienbisaro.com/lodyssedechoumshooomsodyssey

【予告】
youtu.be




【あらすじ】
風が吹く日。1羽の鳥が孵化した。まだ孵化していない卵と共に自然や人間と触れ合いながら、母を探そうとする。

※先に結論を書きます
【総評】
映像の美しさ、アニメーションの豊かさ、テーマがしっかりとある。映像作品としてだけではなく、子供も大人も楽しめる作りになっているというバランス感覚。鳥たちの愛くるしい動きとコミカルなやり取りにまず癒される作品。欠点が見当たらない秀逸な作品。goodではなく、間違いなくgreatです。

【良い点】
良い点として考えられるのは以下の3つ。

  • 映像の美しさ
  • アニメーションの豊かさ
  • テーマを含むストーリーの巧さ

映像の美しさ
グラフィックデザインを監督自身が担当しただけあってか、映像がこの上なく素晴らしい。
レンズで撮影したような映像になっています。フラットな絵に対して、そのような映像にすると違和感が生じそうと思っていました。しかし、この作品は色の力によって、違和感なく映像としての完成度を高めていると思いました。
色味。北欧のインテリアの配色に近い。空の淡さ、葉の色の数の多さ、黄色の光の美しさなど色に凝った映像。グラデーションを多用しています。例えば、夕暮れ時のシーン。主人公の鳥は白い体なため、ハイライトは通常明度の高い白色になっています。ところが、夕暮れ時のシーンになるとハイライトは赤っぽい色になっています。このように環境色も考慮していて、その色の配色が完璧。そして、そこにグラデーションをかけることで1枚絵のような繊細さになっていると思いました。
特に素晴らしい色味だと感じた箇所は、夜の草原のシーン。光の美しさで誰しもが驚くと思います。虫の光によって鳥のシルエットが葉に映し出されます。その陰と虫によって照らされた葉の色。見た瞬間、これは凄い!イメージボードが動いていると思いました。予告でもこのシーンが少し登場しています。

アニメーションの豊かさ
色味が素晴らしい作品であると同時に、アニメーションの動きも素晴らしい作品。よちよち歩きで歩くシーンが多いですが、その歩きがリアリティがあります。実際の鳥がこのような歩き方をするのか知りませんが、本当にそんな動きしそうと思えました。特に驚いてしまったのは中盤の階段を登る鳥。1つ1つの段差が大きいので体を使って登るのですが、体全体を使って登るアニメーションの巧さが衝撃でした。歩くシーンだけでなく、予告にも登場する水に落ちて回転する鳥の沈み浮きのタイミングの巧さ、風で荒れた波のエフェクト。このように、アニメーションの本質である「動き」が本当に素晴らしい作品でもあります。

テーマを含むストーリーの巧さ
映像だけの作品ではない。あらすじからして、おおよその展開は読めてしまいます。しかし、展開が面白い作品ではなく、シチュエーションごとのコミカルさが素晴らしい作品。例えれば、ピクサーのWALL-Eの前半部に匹敵する面白さです。その場その場で鳥がコミカルな仕草をして顔が緩みます。例えば、背中に卵が当たって水に落っこちそうになったり、キスをして体全体の毛がぼわっとなったりと全体としてユーモアに溢れている。このようなコミカルさのおかげで、とても気楽に見れる。大人も子供も楽しめる作品だと思いました。
そして、ただ単に可愛いだけではないのが、この作品の良さの1つです。テーマがしっかりとあると思いました。舞台はアメリカ。登場する人間の肌が微妙に違う。動物と人間、カワウソと鳥など異種との協力。そして、最後のオチ。これは明らかに「見た目が違えど共生すべき」というテーマに思えました。アメリカが共生の難しさで度々大きな問題になっています。アメリカを舞台にした理由として、監督は豊かな動植物が登場するからと言っています。自分が思うテーマに合致したことが偶然なのか狙っていたのかはコメントから読み取れませんでした。
最初は「母親探しの旅」という体でコミカルな仕草を踏まえ作品に没入させ、出口として「共生」というテーマで締めくくる。万人にテーマを伝えるために入り口を広くして見せている構造だと思いました。手塚治虫先生が「テーマの無い作品はだめだ」と主張していた記憶がありますが、制作者が伝えたいテーマがあることで作品に深みが出ると思いました。

【再度、総評】
映像の美しさ、アニメーションの豊かさ、テーマがしっかりとある。映像作品としてだけではなく、子供も大人も楽しめる作りになっているというバランス感覚。鳥たちの愛くるしい動きとコミカルなやり取りにまず癒される作品。欠点が見当たらない秀逸な作品。goodではなく、間違いなくgreatです。

「ヒックとドラゴン聖地への冒険」冒頭シーンから見る映像・演出等についての考察

日本では去年の12月に公開された「ヒックとドラゴン聖地への冒険」を例にして映像・演出について語っていこうという感じです。
本作を見ていない方でも大丈夫と思います。また、微々たるネタバレを含みますが、ジャンル映画なのでネタバレのせいで楽しめないということはないと思います。
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ドリームワークスが宣伝のため冒頭の10分間を公開しています。この10分中の前半5分について詳しく語ります。
本作見ていない方は一度見て頂くと、後述する考察の理解の助けになると思います。
youtu.be

▼目次

冒頭5分のおおまかな展開

霧が立ち込める中、主人公たちは人間に捕らえられたドラゴンを解放する。解放したドラゴンと一緒に主人公たちの住む場所「バーク島」へと帰還。

カメラワーク・レイアウト

【0秒~12秒】
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上記の4カット全て、視聴者は中央から右側の画面を見るはずです。2人とも光るものを左手で所持していて、見ている人は光るものに意識がいくと感じるからです。
そして、2カットと3カットの光るものの位置が同じなため自然なカット繋ぎになってると思います。
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男性が所持している槍とランプの動きで画面奥にいるドラゴンに視線誘導します。客は画面の奥を見ることになります。そして、男性が大きく動くことで客は男性を見ます。男性の動きはカット間で動く向きが同じため自然なカット繋ぎです。(こういう繋ぎをアクションカットというのかも)
図では「視線ライン」と名付けて客の視線が向くだろう動きを可視化しています。

【12秒~24秒】
主人公と男性の戦い。このシーンも光るものに視線誘導していると考えられます。
そして、何といってもこのカット。ロジャーディーキンスさんらしいカットで非常にかっこいいです。
一気に画面が炎によって明るくなり、この美しさで本作の印象的なカットの1つです。
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ヒックとドラゴンシリーズを見ている方はご存じと思いますが、このシリーズは言わずと知れた撮影監督のロジャーディーキンス氏が参加しています。

(余談)
24秒以後はコミカルなやり取りがありますが、映画冒頭にコミカルさを入れることで観客に映画の世界に入りやすくしていると思います.

【37秒~46秒】
このシーン、9秒間の1カット。
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じわじわとカメラが移動することで視線範囲も徐徐に左側に移動。そして炎によって明度が変化するが客の視線範囲内にあるため、自然な変化となり見やすい。
また、強引なカメラワークであっても基本的な視線範囲は変わらないまたは範囲が狭まるので客にとって負担がない。

【46秒~1分29秒】
この一連のシーンでメインキャラクターが全て登場します。このシーンについては後述の「キャラクターの登場時間」にて語ります。

【1分29秒~1分34秒】
俯瞰視点。このシーンについては後述の「カットの意味合い」にて語ります。

【2分1秒~2分50秒】
このシーン約49秒間の1カット。メインキャラクターの活躍をそれぞれカットを割らずに見せているので一体感があり長尺1カットが効果的に感じれます。

【3分6秒~3分24秒】
脱出シーン。脱出なので躍動的になる必要がある、そのため視線範囲が目まぐるしく移動します。ライブ感が感じられると思います。
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【3分53秒~4分43秒】
ほぼ全てのカットで「左から右」のカメラワークになっています。
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▲挙げたらキリがないので一部のみ
左側は古い・右側は新しいという感覚が西洋で昔からあるようで統計グラフなどの時間軸にも顕著です。同様に映画の世界でも右側に新しいものという考えがあるようで、この一連のシーンはその基本に忠実と感じます。

画面の色と密度

冒頭5分において、画面的には3段階の変化があります。
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【一段階】
この段階では「彩度・明度が低い」「使用されている色が少ない」。この2つの特徴があります。画面全体的には彩度・明度は低いですが、炎によって彩度・明度を一部分だけ際立たせることで視線誘導を図っていると考えられます。

【二段階】
一段階に比べて、強烈に「彩度・明度が高まる」。また、白色を基調とした画面なため、観客は「眩しさ」を感じます。

【三段階】
この段階では、一段階・二段階では画面的に「疎」であったのに対して、画面が異常なまでの「」になります。また、使用されている色もグッと多くなります。情報量が増えるということです。この疎密のギャップ・そして音楽によって観客のテンションはグッと高まります。

キャラクターの登場時間

キャラクターの登場時間は以下の通りです。
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シリーズを通してのメインキャラクターは開始から1分30秒で全員登場します。また、今作のメインキャラクターの白いドラゴン「ライトフューリー」は3分30秒で登場となり、キャラクターに関しては「3分30秒で全てメインは登場済なります
観客はキャラクターを見たいと思うはずです。予告によって知ったキャラクターが出てきたら、映画の本編が始まったと感じる人も多いように感じます。その反面、キャラクターがなかなかでてこないと観客の集中力が途絶える可能性もあります。(天気の子では自分が感じました。なかなか晴れ女が出てこないなぁと思ってました)
大衆映画において、キャラクターの登場時間も重要性はあると個人的に思ってます。

カットの意味合い

1分34秒にある俯瞰ショットです。この俯瞰ショットは「主人公たちは船にいる」という説明のほかに「敵の登場」があります。
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しかし、次のカットでは主人公は敵と遭遇しません。主人公が敵と遭遇するのは2分の箇所です。つまり、敵の登場から遭遇に30秒間がある。
この30秒の意味合いとは?
この30秒の間の意味は「段取りくささを回避した」と考えます。俯瞰ショットで敵の登場の後にすぐ敵と遭遇させると段取りくささを感じることは想像できると思います。
例えば、トラックが道を走るシーンをAとして、子供がトラックに轢かれるシーンをBとします。Aの後にすぐBがくると見ている人は状況を把握します。しかしAとBの間に子供がボールを持って落としそうになりながら歩くというシーンを入れると、見ている人は「危なっかしさ」を感じます。それはトラックが走るシーンから轢かれるのではないかと連想するからです。

つまり、A→Bであると段取りくさい(段階的)で状況把握はしやすい。しかし、A→α→Bとすると段取りくささが消え、客を意欲的に見せる効果も付与することもできるとなります。
30秒の意味合いは「敵が迫っているのに主人公たちは一切気が付いていない」という危うさを狙ったものと考えれます。
一方で、主人公たちが気が付いていないのは「キャラクターの考えが浅い」と思う人もいるかもしれません。「通常考えたら、周囲を警戒しながら作戦を実行するはずだ」と。しかし、これがスタッフの狙いなのだと思います。この映画は、「主人公たちの未熟さ」を積み重ねている映画なのです。この冒頭のシーンだけでなく、序盤中盤と主人公たちの未熟さからくる失敗や危険を描いています。

俯瞰ショットの狙いは「主人公が船上にいることの説明」、「主人公の未熟さの積み上げの1つ」、そして「危なっかしさを出す+αシーンの種」。この3つがあると思います。

その他

聖地への冒険のために新たにリギングの調整とシミュレーションの強化を技術的に発展させたようです。
research.dreamworks.com

ドラゴンのアニメーションは非常に難しいとされています。鳥+爬虫類なので、飛ぶという動作に四足歩行、尻尾の動きがプラスされるためと思います。

アニメーションreel
vimeo.com
vimeo.com
vimeo.com

インタビュー等資料
realsound.jp
www.cinematoday.jp
animeanime.jp
www.cinematoday.jp